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2024.01.11歯科BLOG

お口の発達と離乳食の進め方【現役の歯科医師が解説】

食べることは自然にできることではありません。離乳食が始まるころから食べる力の基礎が養われていきます。今回は、お口の発達と離乳食の進め方について解説します。


お口の発達の重要性

赤ちゃんの口や舌、顎などの動きには発達の順番があります。その順番に合わせた離乳食の与え方が将来の咬む力や飲み込む力、そして歯並びや話すことにもつながっています。

離乳食を始める月齢は、なぜ5ヶ月ごろとされているのでしょうか。生まれたばかりの赤ちゃんには栄養をとるためにの「哺乳反射」という、ミルクや母乳を飲む力があります。口に入るものをなんでも反射的に吸ってしまうためコントロールが難しく、飲む量の調整ができずに吐いてしまうこともあります。この反射は4〜5ヶ月ごろには減少していきます。

また、母乳やミルクを飲む際には、お口を大きく開け、上顎と舌で乳首を挟んで飲みます。実際にやってみるとわかりますが、この飲み方で固形物を飲み込むのはとても難しいです。この飲み方のことを「乳児嚥下」といいます。乳児嚥下も哺乳反射の減少と同じ時期に減少していき、次の段階である食事をとる動きへと変化していきます。

 

【離乳初期】

発達段階:食べ物を取り込み、唇を閉じて飲み込む

離乳食を開始したばかりの時期は、唇を閉じて飲み込むことができなかったり、舌で押し出してしまったり、逆に吸ってしまったりすることがあります。この哺乳反射の名残は徐々に減っていき、下唇が内側に入り込むような動きをし始めます。

これが離乳中期へ近づいていくと、上唇も閉じるようになり、スプーンをしっかりと唇でハサミ、上唇で食べ物を取り込むこと(捕食)ができるようになります。また、お口を閉じられることで、食べ物がどの方へ送り込まれても、飲み込みやすくなります。捕食動作により、食べ物は口内の上顎の前部分に取り込まれます。この部位には、硬さ、大きさを感じることのできるセンサーがあり、食べたものの形状に合わせて押しつぶす・咬むなどの咀嚼運動を引き出します。そのため、上唇を閉じる動きはとても重要となります。

離乳初期の食べさせ方のポイント

下唇の中央にスプーンの丸い部分をのせ、上唇が閉じるタイミングを待ちます。上唇が閉じたらスプーンを引き抜きます。これは、自分の意思で唇を閉じて食べ物を取り込む動きを引き出すためです。このとき、取り込む動きが重要なため、上顎にスプーンをすりつけないようにしましょう。また、無理やりお口の中へ入れず、口が開くのを待つのがポイントです。

まだ離乳食を食べ始めたばかりのころは、ミルクや母乳しか摂取したことがないため、お口に入ってきた食べ物をどのような動きで処理すればいいのかがわかりません。「あまり食べないな」「上手に食べてくれない」と感じても、無理をせず、少しずつ鳴らしていきましょう。大人と一緒に食事をして、ママやパパの楽しく食べている様子を見せてあげるのもいいですね。

 

【離乳中期】

発達段階:押し潰して食べる

この時期になると、舌が上下に動くようになり、形のある柔らかめな食べ物(豆腐など)舌と上顎で押しつぶすことができるようになります。そして、上下の唇を閉じて左右対称に口角が引かれます。また、食べ物を押しつぶすとお口の中で広がり、飲み込みにくくなりますが、唾液と混ぜながらひとまとめにすることで、飲み込むことが可能となります。これを繰り返して、舌の筋力も発達していくのです。

ただし適した硬さでないと、丸呑みによる窒息の危険性もあるため、大人の指で簡単に潰せるくらいの硬さのものを少量ずつ与えましょう。

 

【離乳後期】

発達段階:咬む動きの基礎を養う

歯ぐきで潰しているときの口は、咬んでいる方に口角が縮み、顎もずれます。唇も咬んでいる方へ引っ張られるため、捻れたような形になります。また、下を左右に動かせるようになり、それが下顎をコントロールする動きにつながっていきます。下顎のコントロールは、上下の唇で食器の縁を挟み、水分をすすって飲むという、水を飲む際の動きにも必要です。

 

【離乳完了期】

発達段階:咬む基礎ができ、手を使って自分で食べる意欲が強くなる

前歯が上下生えそろう時期で大切なのは「かじる」動作です。前歯を使ってかじることで、自分のひと口の量がわかるようになり、口周りの筋力発達にもつながります。始めは、口と手の動きに合わせるのが難しいため、詰め込みや指を入れていまうことが目立ちます。自分でやりながら覚えることで食べる力が身に付くので、見守りつつ手伝っていきましょう。

 

食べることが言葉や表情を作る土台に

ここまでの食べるための発達では、唇・顎・舌・頬と口周りの筋肉を動かし、発達させます。この発達は言葉を話すための正しい発音につながっています。例えば、舌の先を上の歯の裏に当てて発音するとき、唇を上下に動かして発音するときに、舌の動きが弱かったり、舌を歯に当てられなかったりすると、正しい発音ができません。また、咬む動きにより頬筋肉が発達することで、言葉と同様に豊かな表情を作りだすことにつながります。


まとめ

離乳初期から完了期まで、さまざまな発達がありますが、発達には個人差があります。また、上手に食べられる日とうまく食べることができない日を繰り返して成長は進んできます。そのため、無理なく焦らず進めていくことが何よりも大切です。

食べること、話すこと、表情をつくることなど広い範囲の成長までを促してくれるのが離乳食です。食事を通して赤ちゃんの口の動きと向き合い、ぜひ楽しい親子の時間を過ごしてください。



あんどう歯科・美容皮フ科

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<記事監修>

安藤雄基(歯科医師)

<経歴>

平成25年3月 愛知学院大学歯学部卒業

平成25年4月 岐阜県立多治見病院研修医(歯科)

平成29年6月 オレンジ歯科クリニック勤務

令和2年7月 おしむら歯科・こども矯正歯科クリニック勤務

令和5年4月 名古屋市昭和区であんどう歯科・美容皮フ科を開業