セラミックが取れた時に起こりうるリスクと対処の重要性

ある日突然、食事中や歯磨き中にセラミックが取れてしまった経験はありませんか？

セラミックは見た目の美しさと耐久性を兼ね備えた歯科治療材料ですが、様々な原因で取れてしまうことがあります。取れたセラミックをそのまま放置すると、歯の内部が露出して痛みを感じたり、さらには二次的な虫歯のリスクも高まります。

セラミックが取れた時の適切な対処法を知っておくことで、歯の健康を守り、再治療の負担を軽減することができるのです。

セラミックが取れる主な原因とは？

セラミックが取れてしまう原因は一つではありません。日常生活のさまざまな要因が影響しているのです。

最も多い原因は「二次カリエス」と呼ばれる虫歯の再発です。セラミックと歯の境目から細菌が侵入し、内側で虫歯が進行することで接着力が弱まってしまいます。特に清掃が不十分だと、このリスクは高まります。

また、歯ぎしりや食いしばりの習慣がある方は、セラミックに過剰な力がかかり続けることで外れやすくなります。文献によると、歯ぎしりの際には歯1本あたり約100kgもの力がかかることがあるそうです。奥歯だけでも計算すると1,600kgにもなり、想像を超える負荷がセラミックにかかっているのです。

さらに、噛み合わせの問題も見逃せません。年月が経つにつれて自然の歯はすり減りますが、セラミックはほとんどすり減らないため、徐々に高くなって強く当たるようになり、外れる原因となることがあります。

接着剤の劣化も原因の一つです。どんなに優れた接着剤でも、長年の使用で徐々に劣化していきます。

これらの原因を理解することで、セラミックが取れるリスクを減らすための対策を講じることができます。

セラミックが取れた時にやってはいけないこと

セラミックが取れた時、焦ってしまうと誤った対応をしてしまうことがあります。ここでは、絶対にやってはいけない行動をご紹介します。

市販の接着剤で自分で付け直す

「応急処置として市販の接着剤で付け直せばいいのでは？」と考える方もいるかもしれません。しかし、これは絶対にやめましょう。

歯科医院で使用する接着剤は、口腔内環境に適した特殊なもので、市販の接着剤とは全く異なります。市販の接着剤を使うと、歯や口腔内に悪影響を及ぼす可能性があるだけでなく、後の治療を複雑にしてしまいます。

また、正しい位置に装着することも難しく、噛み合わせのバランスが崩れる恐れもあります。さらに、接着剤が完全に硬化せず外れて誤飲する危険性もあります。

そのまま放置する

「痛みがないから大丈夫」と放置するのも危険です。

セラミックが取れると、内部の歯が露出した状態になります。この状態を放置すると、虫歯のリスクが高まるだけでなく、歯が欠けたり割れたりする可能性も出てきます。また、すでに虫歯が原因で取れた場合は、さらに虫歯が進行してしまいます。

最悪の場合、歯を残せなくなることもあるので、早めの受診が必要です。

口の中に戻して使用する

取れたセラミックを自分で元の位置に戻して使おうとするのも避けるべきです。

正しい位置に戻すのは専門的な技術が必要で、誤った位置に戻すと噛み合わせに問題が生じます。また、固定されていないセラミックは食事中に外れて誤飲する危険があります。

特に就寝中に外れると、気づかずに誤嚥してしまう可能性もあり、非常に危険です。

セラミックが取れた時の正しい対処法

セラミックが取れた時は、冷静に以下の手順で対処しましょう。

取れたセラミックを確認し保管する

まず、取れたセラミックを飲み込まないように注意して口から取り出します。セラミックの破片は先端が尖っていることがあり、飲み込むと食道や胃を傷つける可能性があります。

取り出したセラミックは軽く水洗いし、清潔な容器やジップロックなどに入れて保管しましょう。ティッシュに包むと白い色に紛れて紛失する恐れがあるので避けてください。

セラミックが丸ごときれいに取れた場合は、歯科医院で元の場所に戻せる可能性があります。破損していない状態で持参することが重要です。

早めに歯科医院に連絡する

セラミックが取れたら、できるだけ早く歯科医院に連絡しましょう。

状況によっては急患として対応してくれることもあります。電話で「セラミックが取れました」と伝え、どのように対応すべきか相談しましょう。

口腔内を清潔に保つ

セラミックが取れた部分は象牙質がむき出しになっていることが多く、外からの刺激を受けやすい状態です。

歯磨きは普段以上に丁寧に行い、口腔内を清潔に保ちましょう。ただし、露出した象牙質はエナメル質より柔らかいので、強くゴシゴシと磨くと削れてしまう可能性があります。優しく丁寧に磨くことを心がけましょう。

刺激物を避ける

セラミックが取れた状態では、冷たいものや熱いもの、甘いものなどの刺激に敏感になっています。

歯科医院を受診するまでの間は、刺激物の摂取を控え、できるだけ取れた部分で噛まないようにしましょう。

どうしても痛みがある場合は、市販の鎮痛剤を服用するのも一つの方法です。

セラミックが取れた後の治療法

歯科医院でどのような治療が行われるのか、事前に知っておくと安心です。

再装着できるケース

取れたセラミックに問題がなく、歯にも二次カリエスなどの問題がない場合は、そのまま再装着できることがあります。

歯科医師が取れたセラミックと歯の状態を確認し、問題がなければ専用の接着剤で再び装着します。この場合、比較的短時間で治療が完了します。

ただし、再装着する前に歯と取れたセラミックをしっかり洗浄・消毒することが重要です。汚れが残っていると、再び外れやすくなってしまいます。

新しいセラミックが必要なケース

以下のような場合は、新しいセラミックを作り直す必要があります：

• セラミックが破損している
• 歯に二次カリエスができている
• 土台の歯が割れている
• セラミックと歯の適合が悪い

新しいセラミックを作る場合は、型取りをして技工所で作製するため、通常2〜3回の通院が必要になります。

予防のためのナイトガード

歯ぎしりや食いしばりが原因でセラミックが取れた場合は、再発防止のためにナイトガードの使用を勧められることがあります。

ナイトガードは就寝時に装着する特殊なマウスピースで、歯ぎしりによる過度な力からセラミックと歯を守る役割があります。

「違和感があって使いにくい」と感じる方もいますが、セラミックの保護だけでなく、天然歯の摩耗防止にも効果があるので、医師の指示に従って使用することをお勧めします。

セラミックが長持ちするためのケア方法

せっかく装着したセラミックを長く使うためには、日頃のケアが欠かせません。

定期的なメンテナンス

多くの歯科医院では、セラミック治療後に定期的なメンテナンスを推奨しています。一般的には6ヶ月に1度の検査とクリーニングが目安です。

定期検診では、セラミックの状態や噛み合わせ、二次カリエスの有無などをチェックします。問題を早期に発見することで、大きなトラブルを防ぐことができます。

適切な歯磨きと口腔ケア

セラミックと歯の境目は特に丁寧に清掃することが重要です。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使って隙間の汚れもしっかり除去しましょう。

ただし、フロスを使う際は注意が必要です。セラミックは咬む方向からの力には強いですが、フロスを通して下から上へ動かす力には弱い性質があります。強い力でフロスを引き抜くと、セラミックが外れる原因になることがあります。

硬いものを噛まない

セラミックは天然歯に近い硬さを持っていますが、氷を噛んだり、殻の硬い食べ物を噛んだりすると割れるリスクがあります。

特に前歯のセラミックは、横からの力に弱いので、硬いものを前歯で噛み切る習慣は避けましょう。

セラミックを長持ちさせるためには、これらのケアを日常的に行うことが大切です。

まとめ：セラミックが取れた時の対応と予防法

セラミックが取れた時は、まず取れたセラミックを確認し、清潔な容器に保管しましょう。そして早めに歯科医院に連絡し、適切な処置を受けることが重要です。

絶対にやってはいけないのは、市販の接着剤で自分で付け直すこと、そのまま放置すること、固定されていない状態で口の中に戻して使用することです。

セラミックを長持ちさせるためには、定期的なメンテナンス、適切な歯磨きと口腔ケア、硬いものを噛まない習慣が大切です。特に歯ぎしりや食いしばりがある方は、ナイトガードの使用も検討しましょう。

美しい口元を保つためにも、セラミックのトラブルには迅速かつ適切に対応することをお勧めします。何か不安なことがあれば、お気軽に歯科医院にご相談ください。

セラミック治療でお悩みの方は、名古屋市昭和区のあんどう歯科・美容皮フ科までお気軽にご相談ください。経験豊富な歯科医師が、あなたに最適な治療法をご提案いたします。

＜記事監修＞

安藤雄基（歯科医師）

あんどう歯科・美容皮フ科

〒466-0014

愛知県名古屋市昭和区東畑町１丁目40−９

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平成25年3月　愛知学院大学歯学部卒業

平成25年4月　岐阜県立多治見病院研修医(歯科)

平成27年6月　東海市 小島歯科室 勤務

平成29年6月　名古屋市緑区 オレンジ歯科クリニック 勤務

令和 2年7月　名古屋市中川区 おしむら歯科・こども矯正歯科クリニック 勤務